付き合い始めて6年が経つ彼とは、お互いの家の合鍵を渡し合い、結婚についても考え始めていました。
ですが、彼、実は浮気をしていたのです。
彼の家で、浮気相手と鉢合わせなんていう修羅場は、テレビドラマの中だけの話だと想っていました。
まさか私の身に、そんな修羅場が降りかかってくるなんて……。
初めて感じていた「愛」
彼との交際は、それまで私がしてきた恋愛とは大きく違いました。
それまで、恋人と過ごす時間はドキドキするものだと想っていたのですが、彼とは、ドキドキよりも安心感を味わっていたのです。
一緒にいて気楽で、なんでも打ち明けることができると信用もしていました。
「結婚するなら彼がいい」
そんなふうに、初めて結婚を強く意識することができる恋人でした。
彼の家に一泊した日
ある日、私は彼の家に一泊し、次の日は彼の家から出勤をしました。
でも、会社について、彼の家に自分の家の鍵を忘れてきてしまったことに気づき……。
すぐに、「鍵忘れた! 仕事終わりに取りに行くね。ついでに夜ご飯も作るよ♪」とメッセージを送りました。
しかし、朝に送ったメッセージは、一向に既読がつきません。
その日、彼は仕事がお休みだといっていたので、「寝だめでもしているのかなあ?」なんてのんきに想っていました。
女性物の靴と声
仕事を終え、スーパーで買い物をしてから、彼の家へ。
玄関を開けると、そこには、女性物の靴がありました。
もちろん、私の靴ではありません。
一瞬で頭が真っ白になりました。
「もしかして……浮気?」と、テレビドラマの中のような展開を想像してしまいましたが、すぐに「お客さんでも来てるのかな?」と思い直しました。
靴を脱いで、一歩家の中に上がったときでした。
彼の寝室から、女の人の声が漏れ聞こえてきたのです。
ただの笑い声ではなく……「ああ、この声、ヤッてる」と確信しました。
裸の浮気相手と鉢合わせ!
寝室に乗り込んでやろうと想いましたが、体は簡単に動きませんでした。
ガタガタふるえてしまって、歩き出せないのです。
すると、寝室のドアが開き、真っ裸の女性が出てきました。
そのうしろから彼も出てきて……。もちろん彼も裸でした。
立ちすくむ私に気づいた浮気相手の女性は、小さく悲鳴を上げて、寝室の中に隠れました。
彼は慌てふためいた後、私の前で土下座をして、こういい放ったのです。
「違うんだ。彼女は、その……風俗の子で!」
彼女がいて、合鍵まで渡す関係なのに、風俗の女性を家に呼び肉体関係を持つ人などいるわけがない。
黙っていましたが、心の中でそう思っていました。
すると、寝室から服を着た浮気相手が出てきて、「ごめんなさい。浮気してました」と頭を下げてきたのです。
そして一言――「わたしはデリヘルではないです」。
バレバレの嘘に愛が冷めた
浮気相手は、私の存在を知っていながら彼と付き合っていたようでした。
ですが、「風俗の子」といわれ、さすがにショックだったのでしょう。
その場で彼に、「終わりにします」といって、家を出ていきました。
私はそれを止めませんでした。
はっきりいって、二人のことなどどうでもよくなっていたのです。
結婚まで考えていた彼に対しての愛情は、すっかり消失。
すがるような目で私を見る彼の頬を一回ひっぱたき、私ははっきりと「さようなら」と告げました。
交際6年。
信用できる関係に心地よさを感じていた分、そこが崩れたことで、すべてが終わったのです。
彼との恋は、もう終わったこと。もちろん未練なんてこれっぽっちもありません。
ですが、時々ふと、浮気相手との鉢合わせをしたあの状況を思い出し、胸やけするような気持ち悪さを感じることがあるのです。