夫の不倫相手が突然訪ねてくるなんて。まさに青天の霹靂。
夫と私、5歳の娘の3人でピクニックに行く予定だった初夏の日曜日、突然その人はやって来たのです。
家のインターホンが鳴ったとき、私はお弁当づくりをしていたので、「ごめんね、出てちょうだい」と娘に声をかけました。
しばらくして戻ってきた娘は「知らないお姉さん」と一言。
「何かの勧誘や営業かな?」と思った私は手を洗い、玄関に向かいました。
訪ねてきた女性の名前を聞いた夫の反応が……
玄関にいたのは、20代前半とおぼしき正統派美人。
長い髪、少しきつめの印象を与える整った顔。
「いったい誰?」と思っていると、彼女は眉ひとつ動かさずに「功さん(私の夫)お願いします」と言ったのです。
その瞬間、ピンと来ました。「あぁ、不倫相手か」って。
一応名前を聞き、リビングで新聞を読んでいた夫へ「千恵子さん(夫の不倫相手)という人が来てるけど」と告げるや、一瞬で顔面蒼白に……。
訪ねてきた女性の名前を聞いた夫の反応が……
そして、唇を震わせながら「居ないことにして」「追い帰してくれ」と言うばかり。
そこに娘が来て、無邪気に「パパ、早く出かけようよ~」と大声で言うもんだから、夫に逃げ場は無し。
やがて、重い足取りで玄関に向かったのです。
夫と夫の不倫相手とのやり取りをあえて見守って発した私の決意
「どうして連絡をくれないの?」
「……」
「奥さんとはいつ別れるの?」
「…………」
「私と結婚したいって言葉は嘘だったの?」
「………………」
あぁ、これってドラマで見たことあるやつだ――と、意外なほど冷静に状況を見つめている自分がいました。
「奥さんより私の方が好きって言ってたじゃない」
「……頼む、帰ってくれ。今度きちんと話すから」
心がスーッと冷めていた私は、本心で言いました。
「どうぞ、この人を持っていってください」
それを聞いて、慌てふためく夫。
まるで私の存在に気づいていないかのように、夫をジッとにらみつける彼女。
その後、長い沈黙が続き、何も言えない夫に愛想を尽かしたのか、やがて彼女は無言で出ていきました。
夫が不倫を始めたきっかけを聞き出して思った「離婚するかどうか」
彼女が帰った後、「早く行こうよ~」と口を尖らせる娘をなだめ、夫からすべてを聞きました。
彼女は、行きつけの飲食店の従業員で、ふたりは体の関係あり。
夫は「すでに夫婦関係は破綻してるから、離婚成立後、結婚しよう」と彼女に言ったとのこと。
世間体を考えれば、たとえ仮面夫婦だとしても、婚姻関係を維持したほうがいい。
でも、夫を心から信頼することはできない。
「もらうものさえきちんともらえれば、離婚してもいい」と考えた私は、夫に判断を委ねることにしました。
それに対して、夫が出した答えは「別れたくない」でした。
私が不倫夫に求めたことは“ただひとつ”
「もう二度と裏切らない」
「こづかいを減らしてもいい」
「クレジットカードは持ち歩かない」
「スマホの中身はいつでもチェックしていい」
夫は平身低頭。
でも、私にとって、そんなことはどうでも良かったのです。
私から出した、離婚回避の条件はたったひとつ。
それは……
夫が記入と捺印した離婚届を私が預かること。
今後、いつでも私の意志で離婚できるようにしたのです。
その後、夫は心を入れ替えたようで、以前よりも家事を手伝ったり、飲み会などの付き合いも控えるようになりました。
ちなみに、不倫が発覚してから、私が夫に言わなくなった言葉がふたつあります。何だと思いますか?
答えは、「ありがとう」と「ごめんなさい」。
あんな不誠実なことをした人に対して、感謝や謝罪の言葉なんて言いたくありません。
きっと夫は気づいてないでしょう……そう、私は“夫を一生許さない”と心に誓ったのです。